
一般社団法人栃木青年会議所
第68代理事長
鈴木 直弥

はじめに
JCとの出会いが人生の転機となった。
このまちの未来を想い、熱く議論を交わす会議。徹底した目的意識のもと構築される事業。同じ志を持った沢山の仲間と共に汗を流し、時には涙を流し、ここでの得た体験の数々が血となり肉となり、今の私がいる。
それまでの自分は、天変地異に見舞われた地域や、紛争地域での救いようのない被害をニュースで見るたび、心を痛めると同時に、「自分にはどうせ、何もすることが出来ない」と虚無感に陥っていた。何の変哲もない日常を送れてしまっていることに対し、罪悪感を抱くことさえあった。結局それでも、行動にも移すことなどできずに、食べて、寝て、忘れて、またいつか画面越しの非日常的な災害に触れ、無力さに襲われる。そんな繰り返しの燻った人生を送ってきた。
令和元年東日本台風の時もそうであった。過去に経験したことのない豪雨に、私たちの故郷は襲われた。幸い、私の家は無事であった。たった数百メートル先の隣町は、川が氾濫し、泥まみれで悲惨な状況となった。
無力。何もできなかった。どうしたら良いのかの知恵も、行動する勇気も当時の私にはなかった。
そんな中で、誰かのためにと、故郷のためにと、果敢に行動していたのがJCのメンバーであった。自分の家族や職場も大変な中、仲間と共に“無償の愛”で人助けをしていた。愛が溢れる奉仕の姿は、憧れとなり、この組織に惹かれた瞬間でもあった。
私が成長することができたのは、一生涯の信頼関係を構築できる“縁”と、ここでしか経験することのできないような“体験”からだ。
そして、決心した。今度は私が、そんな縁と体験を与えられる人となる。
新時代の社会課題に向き合う
歴史を振り返れば、JCは戦後焼け野原、何もない時代に、「新日本の再建は我々青年の仕事である」と産声を上げ、明るい豊かな社会の実現を図ってきた。その情熱の火は全国各地に、この栃木の地にも展開され、67年間絶やすことなく、受け継がれてきた。
時代は変わった。先人たちのお蔭で、何もない時代から、何でもある飽和の時代となった。AIの発達で、あらゆる疑問は瞬時に回答が得られ、文章も、デザインも、音楽も、映像も、あらゆるものをAIで生成できようになった。単純に便利な世の中になったというものではなく、仕事も生活も一変させられる時代が来た。
この時代の変わり目に立った今、明るい豊かな社会とはどんなものか。想像しよう。
今の課題解決のために私たちができることは何か。創造しよう。
JCは、不連続の連続といわれる。時代が変わり、やり方は変わっても、あり方は変わらない。
人財育成の方針 ――理想のリーダー像は“太陽”
JC活動をしていくと、人と組織を動かす場面、誰かの力を借りなければならない場面が必ずくる。大きな事業運営への協力であったり、動員であったり、拡大活動であったり、人を動かす場面は様々だ。リーダーシップが試される、そんなシーンに、人を動かす力の種類は2つ。北風か、太陽だ。
脅迫や圧力で、強制的に力を加えれば、一時的に人は動くだろう。しかしそれは永続しない。心は荒み、組織も分裂してしまう。
人を動かす立場となったら、寓話「北風と太陽」の北風のような強制力ではなく、太陽のように、熱い情熱をもって人と接してほしい。人の情熱は、その人の態度となり、言葉となって、他人に伝播し、他人の心にも火を灯し、情熱を持った集団をつくる。
そしてリーダーは、機会の提供をする役である。負担を掛けてしまうのではと遠慮して、役割を振ることを怠ってはいけない。フィジカルトレーニングと同じだ。適切な負荷を掛けてあげることが、成長することに繋がる。適切な負荷とは、今までにやったことのないこと、役割に挑戦をすることだ。この挑戦は、
JCでは“修練”という言葉で表される。その修練を乗り越えたとき、“負荷”は、掛け替えの無い“付加価値”へと変わり、必ず成長に繋がるのだ。
人は、組織で役割と、達成と、成長を感じた時、帰属意識が高まる。メンバーにこの三つの実感を得られる機会を提供しよう。
仲間づくりは、皆で楽しく、戦略的に
JCは、組織としての若さを失わないためという目的で、40歳卒業という絶対的なルールがある。若者を集めなければ、皆卒業していき、組織は衰退し、消滅してしまう。これまで67年間繋いできた伝統を絶やさず、次代へとバトンを渡し、この先何十年と存続させるためにも、今、仲間づくりは欠かせないのだ。
質の高い奉仕、インパクトのある事業を継続して行うにも、多くの仲間が必要だ。「数は力」とよく言われる所以である。しかし、数とは、単に人数を指すものではない。力となるべきものは、人が持つ、モチベーションの総和なのだ。誰かが逆のベクトルを向いていたら、人数は多くても組織の力は分散される。単なる数集めではなく、誰かのために活動をしたい、自己成長したい、そのような志をもった仲間を、皆で楽しく、熱く誘っていこう。
その熱い誘いがきっと、相手にとっての人生の転機となる。私がそうであったように。
一人でも多くの若者に、ここでしか得られない体験を、ここだからこそ出会える縁を提供したい。
一方で、拡大の戦略は、冷静さ、緻密さも大切だ。戦略を考える会議体は、ビジネスでいえば会社の生命線となる営業会議に位置する。マーケティングにあたる候補者探索の過程と、候補者との効果的な誘い方などを工夫し、アタックの進捗が分かるような管理ツールを使いこなそう。
折角の素晴らしい事業や例会は、内輪だけのものにせず、常に、興味のある方への門戸を開き、ビジターと、魅力溢れる多くのメンバーとの接触機会を増やす。
また、仲間づくりはメンバーだけでやる必要はない。JCの素晴らしさを理解して下さっている行政、シニアの先輩方、事業を共に作り上げるステークホルダーの皆様など、あらゆる縁を活かしながら入会のきっかけに繋げたい。
永遠かつ最大のJC運動といわれる拡大の歩みを、決して止めない。
地域と共にある青年会議所を目指し、地域メディアと連携した広報
せっかくの素晴らしい事業案が構築できても、知られていないなら、無いのと同じだ。SNSはもはや、時代の主流となり、使わない手はないが、本年度は、「地域と共にある青年会議所」を掲げ、あえて、アナログでもある地元メディアを大いに活用した広報活動を展開したい。親世代、さらにその上の世代や子どもたちなど、SNSユーザー以外にも、この地域にはJCがある、こんな素晴らしい人がいる、ということを認知させていきたい。地元に根差した新聞、テレビ、ラジオ、広報誌、あらゆるメディアを動かし、地域メディアを席捲しよう。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
11年に一度のチャンス。とちぎフォーラム開催の主管を担う
栃木ブロック協議会が主催する、とちぎフォーラムの主管のバトンが回ってきた。このチャンスを、私たちの地域の魅力を市外に存分にPRし、インパクトを残す最大の機会とするとともに、主管した我々栃木青年会議所のメンバーの成長と、栃木青年会議所のブランド力アップに繋がる事業を構築しよう。
私たちは、関東地区大会とちぎ大会を2024年に主管し、大きな成果を上げることができた。そこで与えられた効果は、まちに対するものだけでなく、メンバー同士、シニアクラブやOB先輩方、他LOMや各地域のメンバーとの強い絆を結べたことも大きなレガシーとなった。
この成功体験を、とちぎフォーラム開催に活かし、県内各LOMとのより強固な絆を結び、メンバー一人ひとりも、栃木JCの枠を超えた一生涯の縁を構築できる機会としたい。
そのために、まずはこの地域のリーダーとして、誰よりもこの地域の魅力をもっと深く知る必要がある。
栃木青年会議所の管轄地域を細分化し、壬生、西方、都賀、旧栃木、大平、岩舟、藤岡、各地域に眠る魅力を掘り起こし、発信する事業を創造しよう。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
まちづくりの真のプロを選び、共にまちをつくる
我々はまちづくり団体といわれるが、決してそのプロ集団ではない。まちづくりの真のプロは誰か。それは、政治家である。
2026年度は、活動の拠点である栃木市にて、市長選、市議選が行われる。この地域の先の未来を占う大きなイベントだ。正しくまちづくりのプロを選出するために、市民に彼らの声をしっかりと届けられる公開討論会を実施する。これは、どこからも圧力を受けない、政治的に中立で、社会的信用と地域に根差したネットワークがある私たちJCだからこそ行うことができる、意義深い事業だ。
また、全国の例外ではなく、ここ栃木市でも、若い世代の選挙離れが著しい。政治に対する不信感、どうせ変わらないだろうという失望感が蔓延している。これから地域で育っていく世代、未来を担っていく世代が、何を求めているのか、想像しよう。
若い世代の投票率をあげ、私たちが選んだのだと胸を張り政治に対する声を上げられる存在にするような事業を構築していきたい。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
明るい豊かな社会の実現は、子どもたちの成長なしでは語れない
栃木市において、毎年1000人以上の人口が減少している。日本全土の最大の課題でもある少子化は、この地域でも学校の閉鎖や地域の伝統文化の消滅など、大きな問題を抱えている。
子どもたちはまさに、地域の宝である。子どもたちが、将来の可能性を広げられるような事業を構築しよう。同じ志を持つ人、団体とパートナーシップを構築しながら。
地域社会にインパクトを与えられる事業を継続することは素晴らしい。しかし、継続せずに、事業を引き継ぐことが出来るのなら、それはもっと素晴らしい。私たちもやってみたい、と言ってくれる人が現れる事業の構築こそが、運動の境地である。
また、栃木市の持つ魅力の一つに、高等学校が多いことがあげられる。質の高い教育を受けるため、各市町村、あるいは県外からも通学しに来る学生が沢山いるのだ。市内に学び舎をもつ高校生が主体となり、地域の魅力を見つけ、想いを発信する事業を構築する。事業を通して郷土愛を育み、卒業後も住み暮らし続けるきっかけを作りたい。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
明るい豊かな社会の実現は、外国人との共生なしでは語れない
地方における少子高齢化の影響は、地域の労働力供給にも大きな影響を与えており、外国人材を頼ることで維持できている。社会的にも、自然的にも、地方から労働力が減る中で、外国人の方々は増え続けている。
そのような中、まだまだ外国人が住みやすい地域となっているかと言われれば、そこにはまだ到達していない。海を越え、この地域を選んで住み暮らしてくれている外国人と、もともと住んでいる私たちがもっと相互理解し、多文化が豊かに共生し合う地域となるための仕組みを想像し、外国人が活躍する事業を構築しよう。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
国際の機会を掴み、世界平和を真剣に願う
第二次世界大戦から、80年という月日が経った。平和を当たり前と錯覚した日常を過ごしてきてしまった私は、もう二度と戦争なんて起きないだろうと浅はかな考えをしていたが、第三次世界大戦すら起こり得そうなほど、世界各地で緊張状態が続いている。
2026年JCI Asia Pacific Area Conferenceウランバートル大会に参加した際、JCIが世界平和を実現できると確信したできごとがある。世界各国からリーダー達が一堂に会し、「That the brotherhood of man transcends the sovereignty of nations(人類の同胞愛は国家による統治を超越する)」と力強く唱和する場面に立ち会った。世界共通であるJCI Creedの意味を、改めて考えさせられた。また最後のGALA(祭典)では、各国皆笑顔で肩を組み「We are the World」を合唱しいる姿に、深く心を揺さぶられた。
世界平和を願う世界中の同志が集う、世界会議や、ASPAC等の国際会議に参加し、JCの最終目的でもある世界平和を、共に叶えようではないか。
世界で活躍する同志との友情を結び、世界規模の視野と、新たな概念を輸入し、国際感覚を持つリーダーを創造していく。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
JCを知り、JCの学びを最大限に活かす――まずは型を守り、型を磨く
「守破離」という、日本の武道芸道で古くから伝わる言葉がある。成長過程を3つの段階で表す言葉で、まず「守」は型を忠実に守り、基本を身につける段階、次に「破」は基本を応用して、自分なりの工夫を加えていく段階、そして最後に「離」は独自の境地を切り開き、新しいものを創造する段階だ。最初から型を守らずオリジナルを叫ぶのは、型破りではなく、「型無し」だ。
JCには、素晴らしい多くの型が用意されている。この型は、日本や世界で活躍するリーダー達が開発してきた珠玉のプログラムばかりだ。まずはそれらを守り、実践し磨き上げよう。
私が初めて理事を引き受けた時、VF(Visual Future)というJCプログラムを、ヘッドトレーナーでもある理事長自らセミナーを開いてくださり、そこでの、内容がこれまで考えたことのないような概念ばかりで衝撃を受けた。私自身そのセミナーがきっかけとなり、自社の企業理念を再構築し、従業員の育成にも活かし、その後多事業を展開していく起点となった。
ここでの気づきは、自分自身の人生に活かされ、社業にも活かされ、ひいてはそれが地域の活性化に活かされる。学び、行動し、変化のきっかけを得よう。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
旅に出よう!旅は道連れ、世は情け
JCでは、一生記憶に残る旅ができる。知らないまちに行き、知らないものを見て、知らない人と出会う、その経験は、人生を豊かにする。目的をもって、家族から離れ、会社から離れ、故郷から離れてどこかの地に行ったなら、必ずそれに報いるお土産を、家族に、会社に、故郷に持ち帰ることができるのだ。
賞味期限の無い、一生心に刻まれる、体験と成長というお土産である。
引っ込み思案で旅行経験が少なかった私も、JCのお蔭で日本中の様々な地域や、国境を越えて世界を旅することができた。一人旅ではない。共にする仲間がいること。同じ目的の道連れがいることで、一生の思い出に刻まれるような体験ができた。
発想力は、移動距離に比例する、と言われている。旅先には、必ず新しい発見があり、新しい出会いがあり、視野が広がる。
他のLOMの事業や、ブロック協議会や地区協議会、日本青年会議所が展開する事業の大きなスケールを体感し、面白さ、学びの深さを共有し、道連れにしよう!
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
有事の際のJCにしかできない活動の展開
これまで、2026年度展開していきたい運動の方針を述べてきたが、もし年度中に我々の地域に大きな災害等が発生した際は、これらの方針を転換してでも、復旧活動に尽力したい。過去の経験も活かし、有事には災害対策本部を立ち上げ、私たち栃木青年会議所だからこそ展開しえる人の繋がりを生かし復旧活動を展開する。理想の活動は、地域の安全を期してからである。
そして平時には、有事の際の状況を想像する癖をつけよう。有事は忘れた頃にやってくる。平時の心構えと行動が、有事にも役に立つ。平時に災害時活躍する諸団体との交流を密に測り、共に活動できる関係を構築することが重要である。
そしてこれは、必ず拡大にも繋がる――。
さいごに
この一年、これまで述べてきた運動の展開にあたり、関わってくれるメンバーには、二つの力を身に着けてほしいと願う。
一つは、「創造力」であり、一つは、「想像力」である。
創造は、新しい何かを生み出すことである。何も、ゼロからイチでなくても良い。情報が蓄積してきた現代で、全くのゼロイチというのは早々ない。ほとんどの創造は、何かの模倣から始まり、改良し、時代に、ターゲットに合った、新しい形を生み出すものである。学ぶの語源は、真似るである。現状の課題と良い先例を見つけ、真似るところからはじめ、より良い形に昇華させ、未来に必要な事業を創造しよう。
想像とは、目に見えないことに想いを馳せることである。目の前に今いる人は、どうなったら喜ぶか、どんな言葉を掛けたら嬉しいか。想像しよう。先の見えない未来、私たちの行動で、どう変わるのか、想像しよう。世界平和の形はどんなものか、想像しよう。
私たちには、他の地域にはない、とちぎJC宣言がある。ここには、“知恵”と“優しさ”という言葉があり、まさに、“知恵”とは、“創造力”であり、“優しさ”とは、“想像力”である。この私たちだけが持つ宣言を、大切に守り、次代へ残していきたい。
そしてこの二つのsozoする力の根源は、「愛」である。隣の人を想う愛、郷土を想う愛、未来を想う愛である。
私が以前抱えていた、何もすることができないという虚無感が、無力さが、深い愛をもって、数えきれない
ほどの縁と体験を提供してくれたメンバー、先輩たちのお蔭で、「かけがえのない仲間と一緒ならば、なんだってできるんだ!」という“期待感”と“使命感”に変化した。
今しか、此処でしか、私たちにしか、できないことがある。
どうか、共に、挑戦してほしい。笑顔溢れるふるさとのsozoを。